2024-04-01

介護における距離感と快適性の追求

こんにちは、横浜支店の設計担当の安達です。
横浜支店でお手伝いさせていただきましたお客様の事例が、ジェルコリフォームコンテスト2019で全国部門別最優秀賞（マンション）を受賞することができました。
今回は、そちらの事例紹介となります。

お客様のご要望：リフォームの動機
お客様へのご提案のポイントと工夫
お客様のご感想
まとめ

1.お客様のご要望：リフォームの動機

離れて、一人で暮らしていらしたお母さまが病気になり、入院・加療を経て要介護度5に。いずれ娘さんの近くに住む予定で購入してあったマンションに、退院後暮らすためにリフォームを希望されてのご相談でした。
築47年の古いマンションなので使い勝手が悪く、また、設備環境も現在に対応していない状態。
療養中のお母様が快適に便利に暮らせることと、娘さんが介護と仕事を両立できることが課題でした。

＜リフォーム前の状態＞
■日が当たらない部屋がある
■トイレ、洗面所が狭い
■換気のための給気口がない
■エアコン設置に必要なダクトを通す穴がないため、窓ガラスにダクト用の穴がある
■共用部のサッシは老朽化して、すきま風が入る
■キッチンの給湯は、瞬間湯沸かし器
■お風呂の給湯器は、前の住人がユニットバスに交換した時に浴室の奥に隠れてしまって、メンテナンス不可能な状態。

2.お客様へのご提案のポイントと工夫

快適に暮らすために設備環境を整えること、そして、車いすのお母さまにとっても、仕事をしながら介護をする娘さんにとっても便利に暮らせるように、以下のようなご提案をさせていただきました。

■低い間仕切壁の１室とすることにより、全体的に明るく見通し良くお母様の見守り易さと、エアコン１台で全域を温度調節可能にしました。
仕切り壁の上にカメラを設置して、お母さまが一人の時も様子が分かるようにされています。

■換気はガラリ付の内窓を設置し、既存の窓からのすきま風を利用し
給気を確保しました。ユニットバスに24時間換気扇を設置することにより、現在の建築基準法にも適合する換気環境が整いました。
当初、ベッドは外が見える位置に置きたいとのご希望がありましたので、窓際でも、暑さ・寒さの影響を受けないよう配慮しました。
外壁面の断熱施工と内窓の設置により断熱性能が向上、ガラスはUV・遮熱の機能を備えたものを採用しています。

■どのような状況にも対応できるようフリースペースとして広めの空間をつくりました。
現在、娘さんの仕事スペースとしてご利用いただいています。
お母さまのベッドを横に置き、お母さまと娘さん両者にとって安心感が得られるとのことです。

■段差は可能な限りなくし、ドアは全て引戸にしています。
洗濯機は廊下の収納だった場所に移し、トイレと洗面台を１空間として広さを確保。車椅子でも利用できるようにしました。
ガス給湯器はバルコニーに設置し、メンテナンスも可能な状態にしています。

3.お客様のご感想

■建物に電力制限があり24畳の部屋に14畳用エアコンを設置しましたが、十分快適です。
真夏の酷暑、日中外から戻ると拍子抜けするくらい暑さがこもっていなくて驚きました。
エアコンは最小限の使用で済んでいて、省エネになっています。
■誤って換気を止めた時に空気が重たく感じ、換気の重要性を認識しました。
■母は、要介護度５で入浴サービス・リハビリ・看護師・ヘルパーなどの外部からの介護を受けており、様々な人・器具が不定期に出入りします。
外出しにくい母にとっては、社会とふれあう大切な時間です。
リフォームにあたり、その人達にも便利にかつ気持ちよく過ごしてもらえる空間ができました。
■リフォームでは、レイアウトやデザインに気を取られがちですが、担当者のアドバイスにより、断熱と換気の機能を重視し、また、母の身長や体の機能に留意して建材・設備を選んだことは正解でした。
インテリアは後からゆっくり、まずは機能であると感じました。