イベント情報

本展「FORMULATION」では、アートとしての陶の作品から、日々の暮らしの中で使う器や道具まで、幅広くご紹介します。
形や用途は異なっていても、すべてに共通して流れているのは、「素材を調合する」という思想です。

私はこれまで、世界中から素材を集め、独自の調合と焼成によって、新たな表現を模索してきました。
どんな土を選び、どんな釉薬をかけ、どの温度で焼き上げるか――。
そのわずかな違いが、作品ごとにまったく異なる表情と質感を生み出します。

そして今、私にとっての「素材」は鉱物だけにとどまりません。
人や土地、社会のあり方さえも、新たな陶を生み出すための素材と捉えています。
他産地の作家や工場とのコラボレーションを通じて、これまでにない「陶のかたち」を探ることも、私の表現の一部です。

何万年も残るこの素材には、時間を超えて受け継がれる力があります。
慌ただしい日々の中、ふと手にした器に心を動かされる瞬間があるように、陶は暮らしの中にそっとアートを息づかせてくれる存在です。

器は、「触れられるアート」。
使い込むほどに味わいが深まり、自分だけの物語と愛着が宿っていきます。

“陶”が暮らしにあるということ。
それは、手に伝わる温もりや、美しさの中に込められた作り手の意図を感じながら過ごすこと。
無口で静かな器たちが、実はとても豊かなメッセージを秘めていることに、ふと気づく瞬間があるかもしれません。

そんな多様な「陶」と「調合」の魅力を、この展示を通して感じていただけたら幸いです。