耐震基準は築年数で確認|旧耐震・新耐震・2000年基準の違い、2022年税制改正後の住宅ローン控除など解説
耐震基準とは建築基準法上の規定で、簡単にいうと「大きな地震が起きてもただちに人命に危険が及ぶことのない建物を建築するための基準」のことです。
耐震基準には大きく分けて「旧耐震基準」「新耐震基準」「2000年基準」の3種類があるため、「築年数が何年なら安心して暮らせる建物と判断できるの?」と疑問をお持ちではないでしょうか。
そこで今回は、耐震補強リフォームの専門家である北海道のリフォーム会社「土屋ホームトピア」が、以下の項目をわかりやすく解説します。
このコラムのポイント |
---|
|
長く安心して暮らせるマイホームを手に入れるために、ぜひ最後までご覧ください!
Contents
耐震基準は築年数で確認|旧耐震・新耐震・2000年基準の見分け方
中古マンション・一戸建ての物件選びに役立つよう、はじめに旧耐震基準・新耐震基準・2000年基準を見分ける築年数の目安を紹介します。
ただし築年数だけでは「どの耐震基準に該当するか」を正確に確認できないケースもあるため、正確な確認方法もご確認ください。
旧耐震・新耐震・2000年基準を見分ける築年数の目安|簡単な確認方法
旧耐震基準・新耐震基準・2000年基準を見分ける際の、築年数の目安を一覧表にまとめました。
※2024年時点で目安にできる築年数です。
基準 | 築年数の目安 |
---|---|
旧耐震基準 | 築41年より長い築年数 |
新耐震基準 | 築41〜24年以内 |
2000年基準 | 築24年以内 |
ただし築年数とは、竣工(工事完了)時点から数えた年数です。
極端にいうと、「竣工日」「建築基準法の新しい耐震基準施行日」が同じ日の場合には、建物の工事内容は新しい耐震基準に対応していませんよね。
そのため、上記一覧表では、余裕をもって築年数を紹介しました。
正確な耐震基準は、築年数ではなく「建築確認通知書」の確認が必須
「建築確認」とは、建物の工事内容が建築基準法や条例などの法令に適合しているかを確認する手続きです。
そのため建築確認通知書の日付時点の耐震基準を確認することで、建物が旧耐震基準・新耐震基準・2000年基準のどの耐震基準に該当しているかを、正確に確認できます。
基準 | 建築確認通知書の日付 |
---|---|
旧耐震基準 | 1981年5月31日以前 |
新耐震基準 | 1981年6月1日〜 2000年5月31日 |
2000年基準 | 2000年6月1日〜 |
旧耐震基準で建築された中古マンション・一戸建ては、住宅ローン控除を活用できない可能性がある」等の注意点があるため、購入前に必ず建築確認通知書の日付を確認しましょう。
※旧耐震基準で建築された中古マンション・一戸建て購入時の注意点を、のちほど「中古マンション・一戸建て購入時に必ず確認するべき4項目」で紹介します。
「耐震基準を築年数から簡単に確認する方法」「建築確認通知書から正確に確認する方法」を紹介しました。
一戸建て物件を探している段階では築年数で簡単に耐震基準の目安を考えておいてOKですが、購入時にはあとから「考えていた耐震基準でなかった」というトラブルが起きないよう、必ず建築確認通知書を見て耐震基準を確認してください。
土屋ホームトピアは、中古物件探しからリフォームまで、ワンストップでご依頼いただけるリフォーム会社です。
耐震基準のような法令上の規定に関する不安にも丁寧におこたえいたしますので、お気軽にお問い合わせください。
※当社はしつこい営業を一切行っておりません。ご安心ください。
※全国各地に拠点がございます。
旧耐震基準・新耐震基準・2000年基準の違い
旧耐震基準・新耐震基準・2000年基準の確認方法を紹介してきましたが、「旧耐震基準は避けるほうがいいイメージだけど、ほか2つの耐震基準との具体的な違いがわからない」という方も多いと思います。
そこで次に、旧耐震基準・新耐震基準・2000年基準の違いをわかりやすく解説します。
建物の安全性の変化
旧耐震基準・新耐震基準・2000年基準の違いによる建物の安全性の変化を、一覧表にまとめました。
基準 | 想定震度 | 建物の損傷 |
---|---|---|
旧耐震基準 | 震度5強程度 |
変形・倒壊しない |
新耐震基準 | 損傷しない | |
震度6〜7 | 倒壊しない | |
2000年基準 | 数百年に一度程度発生する地震の震度 | 倒壊・崩壊しない |
〈参考〉
・旧耐震基準、新耐震基準:国土交通省トップページ>右上の検索窓に「新耐震基準の概要」と入力して検索
・2000年基準:国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律」>「新築住宅の性能表示制度ガイド」
しかし日本各地で発生した大地震(1978年:宮城県沖地震など)の被害が大きかったことから、主に以下の点を強化して1981年に新耐震基準が施工されました。
- 軟弱地盤に建物を建築する場合の基礎の強化
- 鉄筋コンクリート製の柱が地震の揺れによって破壊される可能性を見据えた補強
- 地震の揺れによる建物の変形を防ぐ構造計算
さらに1995年に阪神・淡路大震災が発生した際には、特に木造住宅の被害が大きかったことから、2000年に主に以下の点が改正され、木造住宅を対象とした2000年基準が施工されました。
- 地盤に合う基礎設計のために地盤調査実施が必要
- 構造材を金具で固定
- 耐力壁のバランス計算が義務
また2000年基準の施行と同時期に生まれた「住宅評価制度」によって、現在は耐震基準のほかに「耐震等級」という指標もあります。
※耐震等級に関しては、のちほど「Q.耐震基準と耐震等級の違いは?」でわかりやすく解説します。
旧耐震基準の建物の地震被害状況|阪神淡路大震災・熊本地震など
建築基準法によって耐震基準が強化されてきましたが、耐震基準は「建物を新築する際に守るべき規定」です。
【1995年:阪神・淡路大震災】
旧耐震基準の住宅のうち約64%が大きな被害を受けました。
また、住宅の倒壊によって非常に多くの方が犠牲になっています。
〈参考〉内閣府防災情報のページ>検索窓に「住宅等の耐震化の推進について」と入力して検索
【2016年:熊本地震】
熊本地震後に一部地域の建物被害状況を分析した結果、倒壊・崩壊した建物のうち72.1%が旧耐震基準の建物でした。
〈参考〉国立国会図書館デジタルコレクション>検索窓に「住宅耐震化の進捗と課題 : 平成28 年熊本地震後の議論を踏まえて」と入力して検索
とはいえ、「築古の物件は購入価格を抑えらる」「建築当時の意匠が残る古民家が好き」などの理由で、現行の耐震基準※に適合していない中古マンション・一戸建てに魅力を感じている方もいらっしゃると思います。
※2024年時点の現行の耐震基準は、2000年基準です。
そこで次に、現行の耐震基準に適合していない中古マンション・中古一戸建ての購入を検討する際に確認するべき項目を紹介します。
中古マンション・一戸建て購入時に必ず確認するべき4項目
国は国内に優良な状態の住宅をストックする政策を実施していて、その一部として耐震化を推進しています。
そのため、現行の耐震基準に適合していない中古マンション・一戸建てを購入する際には、以下のような制度・サービスなどを活用できない可能性があります。
- 住宅ローン減税
- 住宅ローン
- 住宅かし保険
- 地震保険の割引
前述した築年数から耐震基準を想定しながら、「上記のような制度・サービスを活用できるかどうか」も視点に加えて、中古マンション・一戸建ての物件探しをしましょう。
住宅ローン減税を活用できる要件|2022年税制改正後の住宅ローン減税を解説
中古マンション・一戸建てを購入して住宅ローン減税を活用するためには、以下の要件のうちどれかに該当している必要があります。(今回は耐震関連の要件のみ紹介しています。実際には、ほかにもさまざまな要件があります。)
- 中古マンションは築年数25年以下、中古一戸建ては築年数20年以下
- 現行の耐震基準に適合している
- 購入前に耐震リフォームすることを国に申請し、入居日までに耐震リフォームを終えて、現行の耐震基準に適合していると証明できる(2014年4月1日以降購入の住宅のみ)
〈参考〉国税庁>右上の検索窓に「中古住宅を取得した場合」と入力して検索
以前は、築年数によって住宅ローン減税活用が可能かどうかを判断していました。
※ほかにもさまざまな要件があります。
住宅ローン減税の要件は複雑なので、不明点がある場合には最寄りの税務署に問い合わせをしましょう。
こちらの動画でも、住宅ローン減税を解説しています。
住宅ローンを利用できる条件
住宅ローンの借り入れ条件は金融機関ごとに違いますが、例えば住宅金融支援機構が提供しているフラット35を利用する場合は、以下の要件のうちいづれかに該当する必要があります。
- 建築確認通知書の日付が1981年6月1日以降(確認通知書の日付が不明の場合は、登記簿の新築年月日が1983年4月1日以降)
- 建築確認通知書の日付が1981年5月31日以前の場合は、現行の耐震基準に適合している(確認通知書の日付が不明の場合は、登記簿の新築年月日が1983年3月31日以前)
〈参考〉フラット35「【フラット35】 中古住宅の技術基準の概要」
住宅瑕疵(かし)保険を利用できる条件
住宅瑕疵保険の利用は、一般的に新耐震基準への適合が条件です。
住宅瑕疵保険は住宅専門の保険会社が提供している商品のため、利用する保険会社の利用条件を確認しましょう。
地震保険が割引きされる条件
地震保険が割引される条件も、新耐震基準への適合が一般的です。
また保険会社によっては耐震等級によって割引率が変化するケースもあるため、利用する保険会社の割引制度を確認してください。
現行の耐震基準に適合していない中古マンション・一戸建てを購入する前に、確認するべき項目を紹介しました。
現在、耐震基準に関連する多くの制度・サービスは、「現行の耐震基準に適合している」or「新耐震基準の施行後に新築」という条件を満たすことで、活用できる可能性があります。
次に旧耐震基準の中古一戸建てを耐震リフォームする場合の費用も紹介するので、参考にしていただけると幸いです。
耐震リフォームの費用事例
土屋ホームトピアの施工事例の中から、築年数の古い一戸建てを耐震リフォームした事例をピックアップし、費用を紹介します。
※リフォーム当時の築年数を紹介しています。
またご紹介するリフォーム費用はお引き渡し当時の価格です。 同じ価格でのリフォームを保証するものではありませんので、あらかじめご了承ください。
築20年、費用500万円
こちらは、1階に絞って耐震などのリフォームを実施した事例です。
耐震壁を増設したことで空間に圧迫感が生まれないよう、ルーバーや鏡を活用して開放感のあるデザインを実現しました。
〈関連ページ〉4m×19m.“広々”と子育てできる“狭小”縦長住宅
築34年、費用1000万円
こちらは、一度スケルトンの状態にして現状確認をしたうえで、耐震などのリフォームを実施した事例です。
柱を抜かずに移動させることで、個性的なデザインと安心して暮らせる耐震性が実現しました。
〈関連ページ〉シンメトリーに柱を残したオープンキッチン
築41年、費用2500万円
こちらは、壁を補充するべき位置に合わせてユニットバス導入・収納増設などを実施し、外壁もリフォームして大幅に耐震性向上などを実現したリフォーム事例です。
〈関連ページ〉ケーキ屋からなごみの住まいへ
土屋ホームトピアには、今回紹介しきれなかった施工事例がまだたくさんあります。ぜひご覧ください!
〈施工事例〉
「耐震リフォームは高額」というイメージをお持ちの方が多いと思いますが、予算に応じたプラン提案が可能です。
「ほかの工事とあわせて、予算内でリフォームしたい」「現行の耐震基準に適合させると費用はいくら?」など、土屋ホームトピアへお気軽にお問い合わせください。
※当社はしつこい営業を一切行っておりません。ご安心ください。
※全国各地に拠点がございます。
こちらの記事で、耐震リフォームの費用を抑えるポイントを紹介しています。
〈関連ページ〉リフォームでコストダウンするポイントについて断熱リフォーム・耐震リフォーム・計画換気も入れてリフォーム費用を下げる方法
耐震基準Q&A
最後に、土屋ホームトピアがよくいただく耐震基準に関連する質問と回答を、まとめて紹介します。
Q.耐震基準と耐震等級の違いは?
A.耐震基準とは建築基準法で定められている規定で、建物を新築する際には、必ず守る必要があります。
耐震等級とは、住宅の性能を評価する指標の1つで、新築・リフォーム時に、より耐震性能が高い等級を希望する場合には、施工業者に依頼して実現のための設計をする必要があります。
耐震等級は「(低)1・2・3(高)」の3段階に分かれていて、建築基準法上の耐震基準に適合している住宅は、耐震等級1です。
〈参考〉国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律」>「新築住宅の性能表示制度ガイド」
Q.耐震・免震・制震どれを選べばいいの?
A.耐震・免震・制震の違いは以下のとおりです。
建築基準法で耐震基準が定めれられているため、耐震リフォームの際には、耐震補強をベースにして免震・制振を組み合わせるのが一般的です。
- 耐震:地震の揺れに耐える力を強化
- 免震:地震の揺れを制御する装置を導入し、揺れの影響を抑える
- 制震:地震の揺れを吸収する装置を導入し、揺れを抑える
一戸建ての耐震リフォームでどれを選べばいいか迷ったら、予算・地盤・建物の状況に合わせて適切なプラン提案を施工業者に依頼しましょう。
Q.長期優良住宅は現行の耐震基準を満たしているから安心?
A.長期優良住宅とは、長期に渡って良好な状態で使えるよう、さまざまな対策を実施した住宅のことです。
長期優良住宅は、以下のとおり現行の耐震基準を満たしています。
- 中古住宅:耐震等級1〜2
- リフォームした住宅:耐震等級1
- 新築マンション:耐震等級1〜2
- 新築一戸建て:耐震等級1〜3
長期優良住宅は、すべての住宅と同様に、どのような規模の地震・災害が起きても絶対に安心とは言えません。
まとめ
中古マンション・一戸建て物件探しをする際に、「築年数で耐震基準を簡単に見分ける目安」「正確な耐震基準を確認する方法」などを解説してきました。
中古マンション・一戸建てをなるべくお得に購入して安心して暮らせる状態に整えるためには、耐震基準をはじめとして、多岐に渡る視点で物件をチェックする必要があります。
なるべく早い段階でリフォーム会社などの専門家を選んで物件探し・耐震リフォームについてサポートを依頼し、耐震基準に関して不安を持たずに長く暮らせるマイホームを手に入れていただけると幸いです!