
「親が持つ空き家の実家に住む場合、何か手続きが必要?」と疑問をお持ちの方が多いのではないでしょうか。
また、空き家の実家に住むor住まないで迷っている場合は、下の世代へ実家を受け継ぐことまで想定して、負担にならない選択をしたいですよね。
そこで今回は、空き家になった実家に関連するさまざまなご相談を承ってきたリフォーム会社『土屋ホームトピア』が、以下の項目をわかりやすく解説します。
このコラムのポイント |
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「愛着のある実家を引き継いでご自身の快適な住まいにしたいとご希望の方」にも「住まない選択肢を検討している方」にも役立つ情報を、ぜひ最後までご確認ください!
目次
亡くなった親が持つ空き家の実家に住む|相続の手続きが必要

空き家になった実家に住む場合、ご家族の状況によって手続きの要or不要、手続きの内容が変わります。
まずは実家の名義人がご両親のうちどちらかor両方で、すでに亡くなっている場合の手続きを確認しましょう。
相続の手続き内容
実家をご自身名義にして住むことを想定していて、名義人の方からの相続手続きが済んでいない場合、相続の手続きが必要です。
手続きの流れ |
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相続の権利がある方全員と遺産分割協議 ↓ 全員から実家の空き家・土地を引き継ぐことに対する承認を得て、文書作成 ↓ 相続登記 |
相続登記はこれまで任意だったため、国内で以前から「相続登記されていない所有者不明の空き家・土地の増加」が問題となっていました。

相続登記をしない場合は罰則が科されるため、「遺産分割協議・相続登記を速やかに進める必要がある」と念頭に置いておきましょう。
相続手続きの流れに不明点がある場合は、最寄りの法務局か、司法書士or弁護士に相談しましょう。
※相続登記をプロに依頼する場合、対応できるのは司法書士or弁護士のみです。
相続税が発生しないケースもある
「空き家の実家を引き継いで住むにあたって、高額の相続税を支払うことになるのでは?」と不安をお持ちの方もいらっしゃると思います。
でも実は、「相続税の支払いが発生しない」「想定よりも相続税の負担が少ない」といったケースもあります。

【基礎控除=3000万円+(600万円×法定相続人の数)】
相続財産が空き家になった実家・土地のみの場合、遺産分割の方法に注意が必要
「相続財産が空き家の実家・土地のみ」で相続人が複数の場合、相続財産を簡単に分けられない点がネックですよね。
その場合、空き家の実家・土地の分割方法は以下の4種類で、一般的には名義人が複数となる「共有」を避けるほうがいいとされています。
遺産分割の方法 | 内容 |
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現物分割 | 空き家の実家・土地を、1人が相続する |
代償分割 | 空き家の実家・土地の価値を算出し、引き継ぐ方が、他の相続人に対して相続分に見合った現金支払いなどを行う |
換価分割 | 空き家の実家・土地を売却し、相続人間で現金を分配する |
共有 | ・複数の相続人が空き家・土地の名義人となる ・売却・賃貸などの際に名義人全員が契約に参加する必要があり、手続きが複雑になる ・名義人の意見が分裂するトラブルが発生する可能性がある |

※司法書士は書類作成に関する業務全般に対応できますが、遺産分割協議のサポートは依頼できないのが一般的です。
実家の名義人がご両親のうちどちらかor両方で、すでに亡くなっている場合の手続きを紹介してきました。
次に、ご両親のうちどちらかor両方が実家の名義人で、転居などによって空き家になった実家に住む方法も確認しましょう。
親の転居などで空き家になった実家に住む方法2パターン

名義人である親の転居などによって空き家になった実家に住む際に、主に以下2つのパターンが考えられます。
- 実家に住むことをきっかけに、実家の名義をご自身に変更
- 名義変更せずに住む
どちらを選ぶ場合でも、手続きや考えておくべきことがあるため、ご確認ください。
名義変更をして住む|生前贈与の申告が必要
実家をご自身名義にする場合、生前贈与(贈与税)の申告が必要です。
生前贈与には以下2つの方法があるため、どちらを選ぶべきかよく検討しましょう。
※税制改正により、2024年1月1日以降から適用となる内容を簡単に紹介します。
生前贈与の方法 | 内容 |
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暦年課税 | ・実家をご自身名義にした翌年(3月15日まで)に確定申告で贈与税の申告が必要 ・【(実家・土地の価値)-(基礎控除110万円)】の額に対する贈与税納付が必要 |
相続時精算課税 | ・贈与税の確定申告時に「相続時精算課税制度を選択する旨の届け出」が必要で、一度選択したら一生撤回できない ・贈与税申告時に、【(実家・土地の価値)-(基礎控除額110万円)-(特別控除額2500万円)】の額に対する贈与税納付が必要 ・相続時に、過去に贈与を受けた実家・土地の価値を含めて相続税を計算する |
〈参考〉国税庁 トップページ右上の検索窓に「No.4402 贈与税がかかる場合」と入力して検索
上記のうち「相続時精算課税制度」を選択する場合、相続時点の実家・土地の価値を大幅に減額して相続税を計算できる制度「小規模宅地の特例」が使えない点に注意が必要です。
小規模宅地の特例が使えない&実家・土地の価値が「もともと非常に高い場合」「相続時に大幅に上がっている場合」には、相続税が発生する可能性があります。
税制改正により、2024年1月1日から贈与税の計算方法がさらに複雑になります。

そのため、税理士・弁護士のような専門家のサポートを受けながら判断するのがおすすめです。
名義変更をせずに住む|トラブルを避ける対策が必要
空き家になった実家の名義変更をせずに住むこともできますが、将来のトラブルを避ける対策として、以下を実行するのがおすすめです。
対策 | トラブル例 |
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登記簿で名義人を確認 | ・「3代に渡って名義変更をしていなかったため、名義変更手続きが複雑だった」 ・「実家・土地の名義人が複数いた。名義変更の際の協議に苦労した」 |
実家・土地の相続権利がある方に住むことを伝えて、相続のことまで話し合っておく | 「空き家の実家を自分でリフォームして住んでいたが、相続時にほかの相続人から家・土地の価値を分配するよう求められ、トラブルになった」 |
名義変更を検討 | 「名義人の健康状態により意思確認が難くなり、名義変更の手続きを専門家から否認された」 |
ご家庭によって事情はさまざまかと思いますが、空き家の実家に住む時点で将来起きそうなトラブルを想定し、トラブルを避ける対策を講じておくことをおすすめします。
空き家の実家に住む場合には、状況を整理したうえで、専門家のサポートを受けながら手続きなどを進めると安心です。
紹介してきた情報を、参考にしていただけると幸いです。
空き家の実家に住むためのリフォーム費用事例

空き家の実家に住むにあたって、老朽化した箇所などのリフォームを検討している方も多いと思います。
そこで次に、実際に空き家になった実家をリフォームした事例・費用も確認しましょう。
※ご紹介するリフォーム費用は、お引き渡し当時の価格です。 同じ価格でのリフォームを保証するものではありませんので、あらかじめご了承ください。
空き家のリフォーム費用450万円
こちらは10年間空き家だった一戸建てをリフォームした事例です。
奥行きのある縦長の土地に建つ住宅のため、室内が暗い・寒い点が悩みでした。
断熱性低下の原因になっていた窓を塞ぎ、日光・自然風を十分に取り入れられるように室内を改修しました。

〈関連ページ〉縦長敷地に明るさを導く「光の縦穴」~越境の影を解決~
空き家のリフォーム費用500万円
こちらは3年間空き家だったご実家を、相続をきっかけにリフォームした事例です。
無理のない予算で、好みのデザインを実現しながら、耐震性向上を中心として改修しました。

〈関連ページ〉4m×19m.“広々”と子育てできる“狭小”縦長住宅
空き家の実家に住む際に、「老朽化した箇所のリフォームが必要だけど費用を抑えたい」とご希望の方は、こちらの記事でリフォーム方法を確認できます。
〈関連ページ〉実家や持ち家の老朽化に対応するお金がない|お金のかからない建て替え・耐震などのリフォーム方法
空き家のリフォーム費用1,300万円
こちらは、お子さまの進学をきっかけに、空き家になっていた実家をリフォームした事例です。
一部増築によってゆったりとしたスペースと採光を確保し、段差も解消しました。
「大正モダン」をデザインコンセプトとして、内装も改修しています。

〈関連ページ〉大黒柱のある家 2階リビングを増築リノベーション
長期に渡って空き家だったご実家が、住宅性能・デザイン性を高めるリフォームによって生まれ変わります!
土屋ホームトピアには紹介しきれなかった施工事例がまだたくさんありますので、ぜひご覧ください。
〈施工事例〉
空き家になったご実家に住むことを検討中の方は、土屋ホームトピアにご相談ください。
専属チーム体制で、税制に関する手続きなどのご相談も伺いながら、ご実家をこれからも大切に住み継いでいくプランを提案いたします。
※当社はしつこい営業を一切行っておりません。ご安心ください。
※全国各地に拠点がございます。
空き家の実家に住まない場合の選択肢

次に、空き家の実家に住まない場合の選択肢も、簡単に紹介します。
- 家・土地を売却|税金が軽減される税制がある
- 賃貸などに転用
家・土地を売却|税金が軽減される制度がある
空き家の実家に住む予定が無い場合は、家・土地を売却する方法があります。
相続によって引き継いだ家・土地を売却する際には、相続税などを軽減する制度がありますよ♪
制度 | 概要 |
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被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例 | ・所得税の軽減制度 ・相続によって引き継いだ実家・土地を2027年末までに売却し、一定要件に当てはまる場合、譲渡所得額から2,000〜3,000万円を差し引いて所得税を計算できる |
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 | ・所得税の軽減制度 ・相続によって引き継いだ実家・土地などを、相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売却する場合、相続税額の一部を、実家・土地を引き継いだ際にかかった費用として所得税の計算から差し引ける |
小規模宅地の特例 | ・相続税の軽減制度 ・実家・土地に、名義人等が亡くなる直前に住んでいた・事業用として使っていた場合、相続時点の実家・土地の価値を50〜80%減額して相続税を計算できる |
〈参考〉国税庁 トップページの検索窓に、検索したい内容に応じて以下を入力して検索
・No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
・No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
・No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

詳細な条件があり、ご自身が該当するかどうかの確認が必要なため、不明点は最寄りの税務署や税理士等の専門家にお問い合わせください。
賃貸などに転用
実家・土地の立地等の条件によっては、賃貸物件として活用できます。
「家・土地を活用」「家を解体して土地のみ活用」どちらも可能ですので、転用を検討する場合には不動産業者等の専門会に相談するのがおすすめです。
貸家・事務所・駐車場などのほか、さまざまな活用方法を、こちらの記事でご確認ください。
〈関連ページ〉空き家活用の成功事例|ユニークな事例(田舎の空き家活用プロジェクトなど)、補助金も紹介
こちらの動画でも、空き家の実家を活用する方法を紹介しています。
空き家の実家に住まずに所有し続ける場合のリスク|固定資産税6倍など

最後に、空き家に住まずに所有し続ける場合のリスクも紹介します。
ご自身で丁寧に管理していく方法もありますが、一定のリスクがあることを念頭に置いて管理方法を検討しましょう。
「管理不全空き家」指定で固定資産税が6倍になる
国は空き家問題解決に向けて『空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律』を公布し、が2023年12月13日から施工します。
ご実家が、自治体の調査によって「倒壊の危険性がある」などの状態である「管理不全空家」に指定された場合、以下のような影響があります。
- 通常、住宅用地に適用されている「固定資産税額を1/3〜1/6に軽減する制度」から除外され、固定資産税額が6倍となる可能性がある
- 自治体の権限で「空き家の除去などをする行政代執行」「行政代執行にかかった費用の徴収」をしやすくなるため、想定外の費用などが発生する可能性がある など
別荘化する場合、電気・ガス・水道の基本料金を払い続ける必要がある
「空き家の実家を別荘化したい」とお考えの方もいらっしゃると思います。

また、人が住んでいなくても、以下のように少量の電力などが必要な場面があります。
- 水道に自動の凍結防止機能がある場合、電力がないと機能が作動しない
- 水道を定期的に使用しないと、水道管の中が錆びて破損する可能性がある など
電気・ガス・水道料金の支払いを継続する負担を考慮に入れて、空き家の実家を所有し続けるかどうかを検討しましょう。
住まなくても家・家財を管理し続ける必要がある

- 土地内の雑草除去、植栽の剪定など
- チラシなどの郵便物片付け
- 侵入者がいないか、周辺住民の生活に影響する破損がないかなどの確認
- 家と一緒に家財も劣化するため、定期的に処分などの判断が必要
- 食品の残置、油汚れの放置などが害虫・害獣被害につながるため、片付けが必要 など
空き家になった実家と現在のお住まいが離れている場合、「交通費」「管理のために往復する時間」などの負担も生まれることを考慮して、空き家の実家を所有し続けるかを検討しましょう。
空き家管理サービスを利用する場合、費用が発生する
空き家管理を依頼できるサービスがありますが、一般的に1~2万円/月ほどの費用が発生します。
不法侵入・不法投棄・放火などのリスク
人の出入りがない住宅は、地域の中で目立つものです。
そのため、不法侵入・ゴミなどの不法投棄・放火のようなリスクがあることも、念頭に置いておく必要があります。
災害時の被害にすぐに対応できない

特に「地震で塀が倒れて隣家の住人が怪我をした、隣家の物を破損した」といった場合には、大きなトラブルとなる可能性があります。
空き家の実家に住まずに所有し続ける際には、不測の事態にどのように対応するかを、常に意識しておく必要があります。
まとめ
空き家になった実家に住む場合、住まない場合の手続きなどについて、さまざまな状況を想定しながら紹介してきました。
税金などに注目すると「手続き等が難しそう...」と不安を感じることと思いますが、状況を整理して選択肢をピックアップし、するべきことを明確にしましょう!
土屋ホームトピアは全国で68,000件以上の実績を持つリフォーム会社で、住宅総合産業である土屋グループの一員です。
各専門家とのネットワークもいかしてリフォームのご相談を承りますので、お気軽にお問い合わせください。